暖冬の影響
毎年、冬になると積もるくらいの雪が少なくとも二、三回は降る京都府北部に位置する京丹後市ですが、今年は一度も除雪車が出動する事も無く、過ごしやすい冬でした。暖冬ってやつですね。去年の様子。
過ごしやすかったとはいえ喜んでばかりいられず、降らなかったら降らなかったなりのマイナス点があるのが自然界の理(ことわり)、掟なのであります。
m-kinoは木という生き物を扱うことを生業(なりわい)としております。
このような暖冬は、各方面にどのような悪影響があるのか。この経済社会、それに対する影響もさることながら、とりわけ木が育つための自然界の影響についてフォーカスを当てて考えてみたいと思います。
【1】暖冬の原因
まずは暖冬になる原因ですが、最近よく耳にするようになったエルニーニョ現象が原因とされています。
ではエルニーニョ現象って何でしょうか?
気象庁のホームページに寄りますと、エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。
太平洋赤道域は具体的にいうと南米ペルー沖だそうです。赤でグリグリしたところ辺り
逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
ちなみにエルニーニョは、スペイン語で男の子。
ラニャーニャは女の子の意味です。
エルニーニョ現象が起こると北半球の中緯度の上空をうねるように流れる「偏西風(へんせいふう)」と呼ぶ強い西風の進路が変わりやすくなるそうです。進路が変わると、この風に沿って南から暖かい空気が流れ込みやすくなり、結果として日本の 西高東低 の冬型の気圧配置が弱まることになるのです。
シベリア上空の寒気は南下しにくくなります。
この影響は北日本には及ばないので暖冬になるのは関東より西側になるのです。
あまり詳しく説明すると難しいので簡単にしておきます。
いずれにしても世界は繋がってるんですねぇ。
また、夏季の場合、エルニーニョ現象が起こると太平洋高気圧が張り出しにくくなり、西日本の日本海側では降水量が多くなりやすく冷夏になりやすくなります。
ラニャーニャ現象はその逆で、暑夏、寒冬になりやすい。
【2】暖冬の悪影響
①花粉が早くから飛び始める。
花粉症の方は今シーズンすでにつらい思いをされているかもしれません。
花粉症の原因のひとつとされているスギの雄花は、
冬の寒さを経験することで休眠から目覚め、寒さがピークを過ぎて暖かくなると花粉を飛ばし始める習性があります。今シーズンのスギはすでにその状態で現在、例年よりも多くの飛散が確認されています。
②水不足。
積雪が少なかったことから、雪解け水も少なくダムなどの貯水量が例年より少なくなる傾向になります。普段の生活に影響が出てくるかもしれません。
京都府北部の京丹後市はイノシシを目撃することもそんなに珍しくはないのですが、もしも山の水場が不足してしまうと里に降りて来て田畑を掘り返す被害を引き起こしてしまうかもしれません。
③虫が大量発生しやすい。
例年は寒さに耐えきれず越冬出来なかった虫が、暖冬で生き延びて春を迎えると大量発生を引き起こします。虫の中には農作物に悪さをするアブラムシなどの害虫もおり、農家の方は対策にご苦労なされるかもしれません。
虫が大量発生するということは基本的にその天敵にあたる生物も増加しやすい傾向になります。
虫だらけになる可能性があるということです。
全国の松の木が深刻な松食い虫被害に悩まされているのは、寒さに比較的弱い松食い虫が地球温暖化で多く生き残り、松の木を枯らしてしまっていることが原因とされています。
今シーズンの暖冬でまたもや多くの松食い虫が生き残ってしまえば、風光明媚な松の木にも悪影響があるかもしれません。
そういえば、去年の晩夏〜秋頃にはカメムシを大量に見かけました。京都府北部ではカメムシが大量発生する年の冬は、積雪が多くなると云われています。けれども今年は平野部ではほとんど積雪はありませんでした。そればかりかいまだ、カメムシを見かけます。どうなってるんでしょうか。
④漁業への悪影響
以前、大量発生して漁業関係者を悩ませたエチゼンクラゲの生態は謎がまだまだ多いそうですが、大量発生には海水温の上昇があるのではという説があります。
また近年は、スルメイカの漁獲量が減少しておりこれも海水温の上昇が影響しているといわれています。スルメイカが減少するということは、それを餌にする魚も減少するわけですから全体的な漁獲量が減少してしまう可能性があるということになります。
反対に京都府では20年前くらいから鰆(サワラ)の漁獲量が増えてきており、以来全国の漁獲高ベスト3の常連の魚になっています。これも海水温の上昇が原因とされています。
【3】このまま暖冬や温暖化が続くと
エルニーニョ現象と地球温暖化の因果関係は解析されてないそうですが、このまま暖冬や温暖化続くと【2】で挙げた一部の悪影響だけでなく様々な方面で大変なことになるのは必至です。
春は草木が芽吹く季節です。草木の発育は一度始まると後戻りはもちろん、立ち止まることも出来ません。草木は自分の発育時期を見極めて自らのタイミングで芽吹くのです。
自然界の木の新芽は暑い夏や寒い冬を経て芽吹こうとするメカニズムがあります。
また秋に出来た種子は、自らを給水しない乾燥状態を作り出して冬の間を休眠し翌春の発芽に備えます。
例えば、ハナミズキは種が1〜2ヶ月の間、4°Cぐらいの低温期間を経験しないと発芽しないといわれています。
このような植物の種類を「低温要求性種子」といいます。
このまま暖冬や温暖化が進むと種や新芽の求める低温が訪れなくなり野生の植物は春になっても発芽出来なくなる可能性があるのです。
【4】まとめ
今回暖冬のことを調べるにあたって私たちの生活は、世界中全て、自然界全てが連鎖しているのだなぁと感じました。遠い南米沖の海の状態が日本の季節に影響を与え、生態系や食物連鎖に影響を与える。生き物は全て地球のクルー(乗組員)なんだなぁと。それを自覚して毎日を暮らしていかなくてはと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。