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山が豊かだと海の幸に恵まれる

『風が吹けば桶屋が儲かる』
そんなことわざがあります。江戸時代に生まれたことわざと言われているのですが、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩えです。どういうことかというと、
①強風で土ぼこりが立つ
②それが目に入って盲人が増える
③盲人は三味線を買う(当時、盲人が就ける職は三味線弾きや按摩屋)
④三味線の需要が増え、材料となった猫皮が必要になり、猫が殺される
⑤猫が減ればネズミが増える
⑥ネズミは桶をかじる
⑦桶の需要が増えて、桶屋が儲かる。
いかにも江戸時代ならではの感覚ですが、今も昔も経済というのはこのような仕組みの側面があろうかと思います。
そして、これは何も経済に限ったことではなく、自然界の生態系にも同じことが言えるかと思います。
私たちの食卓には海の幸が並ぶことも多々あると思います。海の恵みに感謝です。しかし、実は海の幸は海の恵みというだけでなく、同時に山の恵みということが出来るのです。さしずめ、『山が豊かだと海の幸に恵まれる』とでもいいましょうか。山が豊かでいるには『木』が欠かせません。
どういうことでしょう。
①山の木は、枝を伸ばし葉を茂らせ、実をつけます。
②木の実は、山の動物たちの餌になります。リスやネズミなどの小動物は木の実を食べるだけでなく保存食として地面に埋めて隠したりします。しかしリスやネズミが、キツネやフクロウなどに食べられてしまい掘り返すことをされなかった場合、それがやがて芽を出します。(木から地面に落ちてそのまま芽を出す実もあります。)
また、クマも木の実をたくさん食べます。動物たちの糞、死骸は木の栄養分となり、そしてまた実をつけます。
③落ち葉や枯れ木は越冬のための虫の隠れ家や食べ物になります。落ち葉は腐ると栄養たっぷりの腐葉土になります。
④雨が降ると、栄養たっぷりの腐葉土の間を通り栄養を吸収しながら雨水は地面に浸みていきます。
⑤地面に浸みこんだ雨水は湧き上がり小川となります。それがいくつも重なって川となって流れていきます。川にも腐葉土などの栄養分の影響を受けて、たくさんの生物が暮らしています。
川の水は、田んぼにも流れていきます。田んぼもまた、生物で賑やかです。
⑥川はやがて海につながります。海では植物プランクトンが生まれます。腐葉土には鉄分が含まれており、植物プランクトンや海藻に必要なチッ素やリンは鉄がなければ体の中に吸収できないのだそうです。その植物プランクトンは動物プランクトンに食べられて、動物プランクトンは小魚に食べられ、小魚は大きな魚に食べられます。そして、私たちはその魚を食べています。また、海藻は稚魚の隠れ家になったり、ウニやサザエ、アワビなどの餌にもなります。そして、海藻もウニやサザエ、アワビもまた、私たちは食べています。
⑦海の水は太陽に暖められて、蒸気となって上昇、雲となり雨を降らせます。山にも降らせます。山の木々に必要な水分を与え、そしてまた腐葉土を通過して地面に浸みこむ。①〜⑦はぐるぐると回っています。一見関係ないようでも全て繋がっているのですね。
『風が吹けば桶屋が儲かる』が如く、『山が豊かだと海の幸に恵まれる』なのですね。
山に、森に、林に、木に感謝です。

m-kinoが生業としている木工加工は、当たり前ですが樹木を伐採してはじめて成り立つ仕事です。
その観点からも山の恵みに感謝して日々、仕事に従事したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。

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